ウエイターが立ち止まり、予約のテーブルを掌で指し示すと、椅子を後ろに引いてくれた。
ハルは、軽く会釈してテーブルにつく。
ウエイターがお辞儀をして立ち去る寸前、一瞬だけその目が怪しく光り、口角がほんの少し不気味に上がったような気がした。
何だか少しだけ寒気を覚え、その後ろ姿を見送る。
…気のせいか…
まるで雪のように溶けてしまいそうなほど妙に色の白い男性だったので、生気が感じられないように見えてしまったんだな…きっと。
そんなことを思いながら、視線をドアの方向へと移す。
アキは少し遅れそうだと言ってたから、まだだろうな…
電話で予約した時、個室はないと聞いたので、
「できるだけ目立たない席を」
と頼んでおいた。
きっと、自分の名前を聞いて、理解してくれたのだろう。
店の一番奥の壁側の席を、簡素なパーティションや観葉植物で、然り気無く隠してくれている。
粋な計らいに感謝しながら、ハルはテーブルに置いてあるメニューを手に取り、目で追い始めた。

