こういう事を堂々とできるって、羨ましいな…
もっとも今はそんな相手など居ないが…。
いつか自分も、こういう感動の瞬間を経験する事ができるのだろうか…。
何よりも特別な愛に満ちた時間を共有している、という雰囲気が、二人の笑顔から溢れんばかりに伝わって来る…。
反対側のテーブルを見れば、上品な雰囲気の老夫婦が食事を終えたところらしい。
夫が妻の肩に、コートをかけてあげていた。日本人男性にはなかなかできない紳士的な振る舞いだ。
例えそんな行動こそできなかったとしても、長年連れ添って今も尚、そんな優しさをかけてあげられる…
そんな相手に、俺はいつか巡り会えるのだろうか…。
ハルは、店の客のそれぞれの一瞬に、その人達の人生を感じながら、店の奥へと進んだ。

