眼下にある通りの街灯が、小さく煌めいている。
マンションの18階のこの部屋から見る景色は、
少し離れた高層ビルの屋上で点滅する航空障害灯のランプや、
夜中でも交通量の多い大通りを行き交う車のヘッドライト、
赤く点滅するブレーキランプ、
三色に変わる信号機の色さえも、
煌めくイルミネーションだ。



その景色を見ながら、ハルは後ろからアキの身体を包むように両腕で抱いた。

「綺麗だな…」

そう言ったアキの吐いた息で、冷たい窓ガラスは白く曇り、その白は、またゆっくりと消えて行く。



窓越しに見下ろす街は、今日も確かに息づいている。
この街の中で、これからも生きて行く。


紺碧の空の色が、少しずつ薄くなって行く。
その中を白く清らかな粒が、街の灯りの上に、静かに、そして優しく、舞い降りていた。



         ―― Fine ――