でも、もう、そんなことも許されないんだな…
今、確かにアキはこの腕の中にいるのに…

また、引き裂かれてしまうのか…。

離したくない。
この身体を…
この心を…。


アキ!アキ!
これで最後だと言うのなら、せめて今目を覚ましてくれ!

俺の為に笑顔を見せてくれ!



ダメだ…また辛い想いをさせるのか?
あの時、どれだけの絶望感を与えたのか、俺には容易に想像できる。

もし、俺が生かされて、アキだけが命を奪われることを想像しただけで、気が狂いそうになる。

もうそんな想いをさせたくはない。



もう逃げ回るのはやめにしよう…。
もう一度、奴の要求を飲めば、アキの命だけは助かる筈なんだ。
アキの意識が戻る前に、俺だけが奴の元に戻れば…。


目の前が、涙で霞む。
ハルは、その涙を何とか押し戻そうと、大きく息を吸い込んだ。