そのうち初めてアキが映画に出ることが決まった。
まだ台詞は全くなく、刑事ものの爆破シーンで被害を受ける役らしい。
一度目の爆発があり、野次馬で人が集まる中、すぐ近くで二度目の爆発が起こり、吹っ飛んで倒れ込む若者数名の一人らしい。
“ 吹っ飛んで倒れる ” 練習を何度もさせられた話を聞いていたのに、そのシーンはものの見事にカットされていた。
「野次馬役のエキストラの中に混じってのシーンだから、たいして目立たないと思う」
と、渋るアキに、
「どんな小さな役でも、アキの初出演作じゃん。俺、楽しみなんだよ!」
とはしゃいで、半ば強引に一緒に観に行ったことを後悔した。
彼から聞いていた爆破シーンがアッサリ終わり、その次のシーンに切り替わった後のストーリーを、俺は殆ど覚えていない。
映画を観終わったら、食事に行き、感想を語り合うつもりだった。
どんな小さなシーンでも、アキがどんなに丁寧に演じたか想像がついていた。
帰り道、どこかの店に立ち寄ることもなく、二人共ただ無言で駅に向かって歩いた。
彼にどう言葉を掛けたら良いのかわからなかった。

