一度家へ戻ってから着替える時間があると思い、普段着で練習に行ったものの、思いの外、余裕はなさそうだ。
素早くシャワーで汗を流すと、スーツに着替えた。

いつもは友達との食事にそんな改まった格好などしないが、ハルの指定した店は、ちょっとお洒落な感じらしいし、取り敢えずはクリスマスだ。

いつもラフな服装しかしないので、 “ ドレスコード” みたいな状況になるといつも悩む。だから、少し前に新しいスーツを買っておいたんだ。

ハルはモデルだから、きっと質の良い物もよく知ってて、私服のセンスもいい。
だからって訳じゃないけど、やっぱり釣り合いも考えたい。

新しいスーツを着てみたものの、本当に自分に似合うのかもよくわからなくて、他の服まで引っ張り出して、鏡の前であれこれ迷う。
ハルが目を丸くして、
「それ、すごく似合うな」
なんて微笑んでくれる顔を想像しながら…。

「何やってんだ?俺。デート前の女子か?キモいな」

結局、買ったばかりのスーツに戻して、
でも、ネクタイはちょっと照れるから、スーツの下はシャツはやめて、落ち着いた感じの薄手のセーターにした。