夜の冷たい森の中…

ハルは、幾度も瞼を濡らす冷たい感触に気づき、ゆっくりと目を開けた。



頭上から舞い降りる無数の粉雪…。

それは夜空のずっと彼方から、ひらひらと落ちて来る。
何の音も発せず、ただただ舞いながら落ちて来る。


とても静かだ…。
時折、吹く風が、木の葉を揺らす音しか聞こえない。



…ここは?…
俺は、何故、こんな場所に?…



空を仰いでいた目線を、すぐ横に向けると、傍らにはアキの綺麗な顎のラインと、形の良い唇があった。

肩から背中に回された腕、自分の頭が彼の胸に包まれていることから、抱き締められていることを知る。

一瞬、その状況に、頬が上気したハルだったが、それはすぐに忌まわしい出来事の記憶に塗り替えられた。