「何でだよ」

「え…、何となく?…。いや、違うな。
ちゃんとアキの口からそう聞いたよ」

ハルは目尻を下げて柔らかに微笑むと、アキの髪の中に指を滑り込ませると、頭を引き寄せ、もう一度自分の胸に抱き寄せた。




そう…
俺達は、あの悪夢のような惨劇を経て、ようやくお互いの気持ちを分かり合えたのだから…。

命の危険に晒される出来事がなければ、心の内を見せ合うことなど、絶対にできなかっただろう…。



ハルの命が消えてしまったことに絶望したアキは、もうこれで全てが終わったと思っていた。

意識を無くしているその間に、ハルが遭遇した不思議な出来事に二人が救われたことなど、全く知る由もなかったのだ。