…そうだ…傷!

アキは慌てて、ハルの首筋に右手を伸ばした。

ハルの命を奪った、鋭い牙で噛まれた深く忌々しい傷跡は、アキの目に焼き付いて忘れることなんかできない。


ハルの首筋に、傷は…ない。
本当に、夢…だったのか?…

一瞬、安堵したアキだったが、反対側の首筋に伸ばした指に違和感を覚え、血の気が引くのがわかった。

ハルの右側の首筋には、確かに赤黒い二つの傷跡が残っていたのだ。
あの男に噛まれ、ハルの命を奪った忌々しい傷跡…。
しかしよく見ると、それは完全に傷口が塞がったような状態になっている。



「アキ?どうした?」

「やっぱり…夢…じゃなかったんだな…。でも…」

何が何だかわからない。
だって、あの時確かに命を落とした筈のハルが、今、生きて目の前にいるんだ…。