クリスマス・イブ、今日も練習日で、既に追い込みの状態。
本番まであと三日だ。


それでも、若者ばかりの集団だ。

「彼女とクリスマスデート」だとか、
「プレゼントは何にする?」とか、
「冬休みの旅行はどこへ行く?」だとか…。

世間の若者達は浮足立っているというのに、毎年この時期は、それを羨みながらも、皆こうして練習に明け暮れている。

「何だか俺達って、淋しいよな…」
などと嘆く声も当然聞こえる。


「よーし、お前達、今日は早く上がらせてやるから、それぞれ楽しんで来いよ〜。ただし、絶対、飲み過ぎたりハメ外して怪我とかおかしな行動だけはするなよ。
明日もレッスンはあるし、明後日はリハーサル、そして27日はいよいよ本番だ。気持ちだけは引き締めておけよ!」

コーチは練習時間を昼間にセッティングしてくれた上にそう言って、早めに開放してくれた。
粋な計らいだ。

けれど、もしかしたらコーチ自身も、クリスマスイブに家族サービスをしたかったのかも知れない。

独身者は、切ない想いをするだけで済むが、妻帯者としては、家庭円満の為には、家庭内のイベントにきちんと参加する事が必須なのだろうと思った。