冷たい夜の風が木の葉を揺らす音だけが、アキの耳に聞こえて来る。
他には何も聞こえない。
誰もいない、暗闇の世界だ。

声が枯れるほどにいくら名前を呼んでも、それに応える声は返って来なかった。

まるで世界でたった一人、この場所に取り残されてしまったみたいだ…。
いや…本当にそうなのかも知れない。




やがて、空から銀の粒が静かに落ちて来た。

冷たい粒が頬に落ちたのに気づき、アキは空を見上げる。

その無数の粒は、柔らかな月灯りに煌めきながら、遠く高い空から降りて来る。