「・・ー!!」

「・ルーッ!!」


朦朧としたハルの耳に、聞き覚えのある声が響いて来て、遠退きそうな意識を呼び覚ました。


「ハルーッ!!どこだーっ?!」


「…ア…キ…?」

…あぁ…アキの声だ…
もう二度と聞けることはないと思っていたアキの穏やかで甘く耳障りの良い声…。

でも今日はいつもの声とは違う。
映画とかの役でしか聞いたことのない、緊迫感のある叫び声。

あぁ、そっか…。
俺があの男に連れ去られたから…
探しに来てくれたのか…。

ここに居るよ。
俺はここだよ。

ごめん…でも、声が出せない。
答える気力ももう残っていないみたいだ。

こんなに暗い森の中だ。
ちゃんと見つけてくれるだろうか…
頼むよ、見つけてくれ…俺を。


もう一度だけでいい。顔が見たいんだ。



「ハルーッ!」

ガサガサと枯葉を蹴散らす音がして、アキの声がだんだん近づいて来た。