「これってやっぱりその…拉致とかの類なんでしょうか…。そして、彼が何らかの形で関与しているのか犯人なのか…」

「いや、しかし、それにしたって、相手は子供じゃないんだぞ。
さっき俺もついそう思わせるようなことを口走ってしまったが…
実際、もし彼だとしたら、自分よりも遥かに大柄の藤崎さんを何とかできるとは思えない…
どうやって誰にも見つからずに連れ去ることができるって言うんだ…?」

「それは僕にもわかりませんが…
でも、こんな不自然が重なるなんて、あまりにも偶然過ぎませんか?」

「そうだよな…。電話番号がデタラメってことは、あの履歴書に書いてある住所や大学なんかも全部そうかもな。何か良からぬことを企んでいたと勘繰られても仕方ないよな。
でも、そうじゃなく、彼もまた一緒に何か訳のわからん出来事に巻き込まれている可能性もないとは言い切れない。

とにかくこれから、帰りがてら履歴書の住所の所に行って確認して来ようと思う。
そっちもデタラメだったら、もうお手上げだけどな」


店内の華やいだクリスマスムードは、すっかり物々しい雰囲気に塗り替えられていた。
その違和感漂う様を、クリスマス・ツリーがただ見下ろしていた。