Phantom (ファントム) ~二人の陽人〜



「この階段を上がるのを見た」
という言葉に、ドアボーイは記憶を辿る。

…そういえば……

こんなサングラスを掛けた男性が、階段を上がって来ようとしたので、会釈をした覚えがある。

そして、その後の出来事を鮮明に思い出した。



いきなりの稲光…
いや、稲妻のように空の片隅を走るのではなく、それはとても強烈な閃光で、一瞬、視界の全てを奪われた。

雷が鳴っていた訳でもないのに、変だな…何だったんだろう…と思い、空を眺めた。
しかし夜の空には、何事もなかったように紺碧の色が広がっていた。

ふと、階段を上がり掛けて来た男性のことを思い出したが、その姿はどこにもなかった。
どこか他の場所と間違えたか、一旦この店に入ろうかと思ったものの、気が変わったとか、そんなところだろうと思い、それ以上、気に留めることもなかったのだ。