数分前ーーー
「あの…すみません」
若い女性二人が、ドアボーイに声をかけながら、店の外階段を上がって来た。
「はい、いらっしゃいませ」
「違うんです。私達、お客じゃなくて…」
「はい、何か…」
「今日、俳優のアキ、ここに来てるんですか?」
「いえ。そのような事は、存じ上げておりませんが」
少し、胸の中に引っ掛かりを感じながら、彼はそう答えた。
「やっぱ、人違いだったのかな…」
「すっごく似てたけどね」
ドアボーイの返事に、女性達は顔を見合わせる。
「ま、店員さんも、もしそうでも立場上、公言できないってとこもありますよね?」
「いや、でも…」
女性達の言葉はその通りで、
仮にそうであっても安易に答えてはいけない立場だとドアボーイは思ったものの、本当に来店した姿を見ていないので、それきり口をつぐんだ。

