乾いた地面を、土と枯葉を蹴散らし、走る足音がしている。

藤崎陽人(フジサキ ハルト)は、顔をしかめ、歯を食いしばり、額や首筋に汗を滲ませながら、必死に走る。



秋も深まったよく晴れた日の夕方、都心から離れた雑木林の中。

鬱蒼と繁っていたであろう木々の葉は、すっかり乾いた色に姿を変え、地面を覆い尽くすように散乱している。
葉を落とした枝の隙間から眩しい光が斜めに射し込み、藤崎陽人の汗を照らしている。

道などない。
不規則に乱立している木々の間を縫いながら、行く手を遮るように目の前に伸びて来る枝を振り払いながら、息を切らしてひたすら走り続ける。


地面を蹴る度、土煙が上がり、埃の匂いにむせ返りそうになる。
咳き込みそうになる喉が、更にカラカラに乾いて息苦しくなるが、足を止める訳には行かなかった。