雲一つない満天の空。
涼しい風が頬を掠める。
花の優しい香り。
ふふ、やっぱり春は好き。
「音葉~っ!」
机から窓を覗いていると誰かに名前を呼ばれる。
私…観月 音葉(みつき おとは)はごくごく普通の高校2年生。
と、言いたいところだけど、どんくさいのがたまに傷。
そして、ガバッと私に勢いよく抱きついてきたのは…
私の親友こと小林 亜美(こばやし あみ)ちゃん。
亜美ちゃんは、優しくて美人さんなの。
「どうしたの、亜美ちゃん。」
「リュウが、浮気したぁ~っ!!」
うわぁーんっと私にぎゅうっと力を入れてくる。
ごめん…亜美ちゃん。
力が強すぎて、痛いよ。
「亜美ちゃんっ、柳沢君(やなぎさわ)がそんなことするはずないよ。
きっと、なにかの間違えだよ。」
柳沢君とは、亜美ちゃんの彼氏ことリュウ君のこと。
私が、亜美ちゃんにこういうのは訳があるんだよ?
だってね、柳沢君…
亜美ちゃんにベタ惚れだもん。
それも、見てるこっちが恥ずかしくなるほど。
私がニコッと亜美ちゃんに笑いかければ
「うわぁーん!持つべきは、親友!」
なんて言ってる。
ふふ、亜美ちゃん可愛い。
「ところで、その手紙はなんだい?」
亜美ちゃんの視線先にあるのは、
私の手の中にある手紙。
「えっと…なんか下駄箱に入ってたの…」
ニヤニヤしながら、私を見ている亜美ちゃんになんだか恥ずかしくなる。
「もーう!今月で何回目?
ラブレターでしょ、それ。」
きゃあー、モテる女は大変ねなんて言いながら亜美ちゃんがバシッと私の肩を叩く。
「ふぇっ!?まだ、見てないし…
ラブレターなわけないよぉー。」
そんな亜美ちゃんに私は顔をかぁぁっと赤くする。
私にラブレター送る人なんていないよ。
「この鈍感少女め~」
亜美ちゃんはツンツンっと私の頬をつついてくる。
「ちがうもん!鈍感じゃないもん!」
そんな亜美ちゃんにムッとする。
もうっ!亜美ちゃんは私のことすぐに馬鹿にするんだから!
「でも、音葉ってどうしても誰とも付き合わないの?」
綺麗な顔がまじまじと私の顔を覗く。
そんな彼女から私は視線を外した。
「…んー、なんでだろうね?」
ニコッと笑って見せる。
確かに恋人を憧れたことがないっと言ったら嘘になる。
むしろ、ずっと憧れてたぐらいだもん。
けど…私は…
「えー、そうなのー?お試しでも付き合ってみればいいのに。
そしたらいい意味で何かが変わるかもよ。」
亜美ちゃんが少し不思議そうな顔をして首を傾げる。
お試しって相手に失礼じゃないかな?
恋人になるってそんな中途半端な気持ちでもいいのかな?
「…そうかなぁ。」
亜美ちゃんの言葉になんとなく言葉を濁した。
…ってこんなこと考えてるから彼氏ができないのか。
…何かが変わる、か。