目を覚ますと天井についたハートの形の天窓の中に雲が流れていた。暫くぼーっお見上げた後、少しずつ、記憶を整理させる。


「あ…あの後バルコニーで寝ちゃったんだ…。」

なのに今私がベッドで眠っていたという事は、ミルキーかサラがここまで私を運んでくれたのだろう。

それから少し考える。ミルキーが私を運ぼうとしても、引きずる形になるだろう。それ以前に、手か足を引っ張った所で私は確実に起きる。


私はミルキーが必死になって私をベッドまで運ぼうとする姿を想像して「ぷ」と吹き出した。変なの。

という事は、サラが運んでくれたに違いない。サラに会ったら「ありがとう。」を言わなきゃ。

私はベッドから出て、ふああとあくびをして目を擦りながらサラとミルキーの元へと向かった。

「おはよう〜…。」

そこにはサラはいなかった。ミルキーが正座して、すごい集中力で絵本や本をタワーのように積み上げた所で雑誌を読んでいた。
声をかけると、ビクッと身震いさせ、すごいスピードで私に向かって振り返った。

「びっっっっくりしたぁあ…!アンジュ様!おはようございます!」

「何をそんなに集中して読んでいたの?」

「雑誌の最新バイク特集です!これなんて専用のマフラーが付いていて凄いんですよ!!冬でも走れる最新型なんです!!凄いんですよ!!」

ミルキーは2回も『凄い』と言って、今まで見た事がないほどにキラキラと目を輝かせ、ブタ鼻を膨らまし鼻息を荒くして、雑誌をぽすぽすと何度も叩く。

…この世界にバイクなんてあるんだ。
でも、ミルキーはバイクには乗れないんじゃ??

私はその言葉を飲むこむ。
そして雑誌を覗き込んだ。

そこには


専用マフラー!!最新の冬でも走れるバイク!!超クールなデザイン!!更に今だけの限定カラー!!

とビックリマークが特盛りの文面。なんと8個もマークがついている。
下を見ると

ふかふかのとても暖かそうなマフラーが巻いてあるパステルカラーで車輪付きのパッチワークで、できてあるペガサスのちんまりとしたぬいぐるみのような物が載っていた。

カラーリングは、水色系と黄色系、ピンク系があって、それより大きく限定カラーのレインボー!!という文面と共に写真が載ってある。

私は拍子抜けして、「へ?」と声を発する。