アンジュと記憶都市



「そうそう、セント様にお会いになる事もあるし、これから聞いといて損はない、むしろ聞かないと苦労するだろうから…メモリのニンゲンへのイメージについて話すわね。これは、童話、として聞いてほしいわ。長いけど我慢してね」




サラはふぅっと息を吐いて、お茶を口に含んだ。そして、よし、と呟いて口を開いた。さっきの明るい様子はすっかり消える。





私は身構えた。






「昔、メモリ達は自分はニンゲンの空想から生まれた存在って信じているものは本当に少なかったの。ニンゲンで言う神様みたいな存在だった…ニンゲンについて記されている本はみんな…古書ばかりでね…

そんな時、記憶都市メモリーにひっそり住んでいて、力を蓄えた魔女が、猛威をふるい始めたの…、片っ端からメモリの『記憶』の能力と『記憶』を奪い続けた……記憶喪失状態になったメモリがこのころ沢山いたわ…そんなメモリを引き取って記憶が戻るまで介抱してるメモリもいた、だけど、薬草やまじないもあまり効果がなくてね…



ついには介抱していたメモリも被害に遭う騒ぎで…『記憶』どころか行方が分からなくなるメモリもちらほら出てきたんだ。

本当に恐ろしかった…そのころのみんなは安心する時間も無かったんだ。夜も寝られない。いつ、自分が被害に遭うか…周りの人が被害に遭うか…。」



想像ができなかった。いつ、自分や周りの愛する人の記憶が失われるか、誘拐されるか、そんな恐怖なんて…。想像するだけで涙が出そうになる。







でも、大丈夫、大丈夫。









これは『童話』なんだ。