「アンジュは本当、クッキーが好きなのね。そこまで喜んでくれると嬉しいわ。どんどん食べてね。」
サラは、私がクッキーを見つめてにやけている理由をなにか勘違いしたみたい。
「あっ、うん、貰うね!」
クッキーを口に運ぶ。
さっくり、しっとりしていて、優しい甘みが広がる。アイシングは、見た目はとても固くて甘そうだったけど、軽い食感でふわふわしてて、甘さも優しい甘さだった。
ミルクティー同様、とても、すっっっごく美味しい。
サラは凄いなぁ…こんどクッキーの作り方教えてもらおう。
そしてニンゲン界に帰ってからお母さんに作ってあげたりなんてしたら、お母さんビックリするかも…
そんな事を考えながら、もきゅもきゅとクッキーを頬張る。
んんんぅ!本当においしいっ!
「アンジュ、そろそろお勉強をしましょうか。この世界について」
私はとっさにクッキーに手を伸ばすのを引っ込めて手をスカートの下にしまう。
すると、食べながらでいいわよ。ノートをとるわけでもないし、とサラは、あははと明るく笑った。
じゃ、じゃあ…と私はもう一つクッキーを取り、頬張る。
幸せな気持ちがじんわり広がる味だ。このクッキーの味はきっとサラにしか作れないだろう。
「こほん、じゃ、ここの世界のお勉強会をしましょう!アンジュは、こっちの世界、記憶都市メモリーについて知らない事が多いと思うの。それでは、色々困ったり、分からなくなることが多いのね。だから教えるわ。」
サラはポケットから赤いつるのメガネを出してかける。(ニンゲン仕様ではなく、サラ仕様)
私は、くすっと笑った。
なんだか先生みたい。
「サラ、今メガネかける必要あります?それにサラは目がいい…し…。」
「いいじゃないの。雰囲気よ、雰囲気。」
サラは今にも鼻歌を歌いだしそうなほど楽しそう。