自分の掌(てのひら)を暫(しばら)く、ぼうっと見つめたまま固まる。

これは、自分がした事なのか。

でも、こんな世界では、これは、『当たり前』なのかもしれない。
いちいち驚いては、これから先持たないだろう。

「驚きましたか、これがアンジュ様の、『才能』なのですよ。」

「成る程(なるほど)ね。空想した所から、実際に物を取り出せる、能力って事?」

するとミルキーは複雑な顔をした。

「うーん…微妙に違いますね、着目点はいいと思います。実際には、空想した物を現せる、正確に言えば、ここの世界に来れば、ニンゲンなら誰にでもできる能力ですがね。」

空想したものを…!!?なんでも現せる?!

「それって……凄いじゃない!!!」

そう言った後、何か違和感がした。

………ん?さっき、ニンゲンなら誰にでもできる能力って言った???

少し回想する。
確かミルキーは…、アンジュ様にしかできない事って言ってたはず。記憶都市メモリーを救う事ができるのも。









あれ…?






ダマされた?






急に気持ちが急速にしぼんでいく。

「あれ…?アンジュ様?何か勘違いしていませんか?」


「何よ…!ニンゲンには誰でもできるなんて知らなかったわ…!」

私は涙目でムスッと拗(す)ねた。

ミルキーは、いやいや、と首を振る。
「酷(ひど)く語弊(ごへい)を招く言い方をしてしまいましたね。申し訳ありません。ニンゲンには誰でもできる素質、可能性があります。でもすべてのニンゲンができる訳ではないんですよ。」

宙に人差し指をさしながらじっとミルキーは私を見つめた。

「と、言うと?」
私は首をかしげた。

「アンジュ様には先ほど申し上げたように『才能』があるのですよ。
アンジュ様、その鉛筆と紙と消しゴムをお貸しして頂けますか?」

ミルキーに言われたものを手渡した。

ミルキーは、紙を小さく折りたたむと書きやすい強度にした後、紙に、1.2.3と書いた。3の上には王冠が書いてある。

「まず、ニンゲンには、空想する。という事ができます。実は、これ、ニンゲンは無自覚なのですが、これは、『むこう』の世界の人、すなわちメモリというものにとってはとても特別な能力なのです。勿論(もちろん)アンジュ様はこれができます。まぁ、これは、レベル1と言う事にしましょう。」
ミルキーは紙に書いてある1の周りにマルを付ける。

驚いた。空想は『むこう』の世界のメモリという人(?)にはできないのか…。
私は当たり前のように日常的に空想していた。