「『親父のような男にはならない』。兄貴は口癖のように言ってた。」


「ああ。」


「でも親父のようになったら………と、兄貴は結婚をしないとも言っていた。」



駈がソファーに凭れて目を閉じた。



「葉月さんを想う分、兄貴は結婚に踏み切れないかもしれない。となると、兄貴と葉月さんは………。」


「駈、ネガティブだな。もっと学を信じろ。」


「そうだ。学は強い男だ。俺達が学を理解してる。」



駈の閉じていた目が開き、学と同じ瞳が現れた。



「駈も強いだろ。ネガティブな考えはよせ。」


「駈、学が変わったのは葉月ちゃんのお陰だ。葉月ちゃんが変われたのも学のお陰かもしれない。だから、あの二人は幸せになるよ。」



優翔と健が駈を真っ直ぐに見つめた。



「あの二人は幸せになるよ。」


「ああ、そうだな。」



ラウンジで飲んでいた人達が徐々に帰り始めた。俺達も腰を上げて家に帰る事にした。