翌朝10時。
私は部屋の玄関の前に立ち尽くしてた。

ついさっき古手川課長から電話が入り、「今日の約束はキャンセルさせて欲しい」と言われたからだ。


「急で申し訳ないんだけど用事ができた。どうしても今日でないといけないから、アルバムを見せるのは次の機会に回して欲しい」


焦ってるようで理由も言わない。

確かに何かがあったんだろうと思うけど、それじゃ納得ができない。


「課長はやっぱり……」


そう呟いたまま、先が言えなかった。

私はやっぱり今度もウソを吐かれたような気がした。


「えっ?」問い直す課長に、「いえ、何でも…」としか返せない。


「私ならいいですから。失礼します」


会話をシャットアウトして、直ぐにバッグの中にスマホを押し込んだ。

押し込んだ途端にバッグの中から音が鳴りだして、(課長!?)と思って取り出したら……



「なんだ。姉さん…」


『舞』という文字に落胆する。
課長がかけ直してくる訳がないと思い、通話ボタンを押した。



姉と短い言葉を交わし、はぁ…と脱力しながら終了ボタンをタップする。


さっきも思ったけど、課長の急用とは本当だろうか。

私はまたしても、ぬか喜びをさせられただけなんじゃないのか。


「急用って何よ。キャンセルを頼む前に理由を話してよ!」


課長が言う「次」っていつ?
「次」って本当にあるの!?