花火大会の夜。
パン、と音を立てて空に咲く花火を見上げながら、きれいね、と月並みなことを言ったら、彼らしい答えが返ってきた。
「ただの炎色反応ですよ」
やっぱりねって、思わず笑って。
続く言葉に、息を呑んだ。
「あなたのほうがきれいです」
思わず見上げると、彼は真剣な顔をしていた。
「付き合ってもらえませんか?
あなたのことが好きなんです」
余裕ぶった笑顔の仮面を、そのときの彼は付けていなかった。
声が震えていた。
あまりにも驚いて。
「考えさせて」としか言えずにいたら、彼は泣き出しそうな横顔を見せた。
わたしの前でだけ、彼は正直だ。



