「案外、それっぽい夜景でしょ?」
私立の高校と大学がいくつかあるだけのこの町のイルミネーション。
このカフェバーからは、思いがけないくらい都会っぽく見晴らせる。
「ただの白色LEDなのに」
ポツリとつぶやく横顔。
ソファで隣り合うようなお店に一緒に来たのは初めてで、この距離は新鮮だ。
「そうね。ただの電気」
「なのに、きれいだと思えるから不思議です」
きみのその感性こそ、ちょっと不思議よ。
お店の料理は創作イタリアンで、今週はクリスマス限定ディナーがおすすめとのことだ。
迷うことなく、2人用のコースを注文する。
飲み物は、彼に合わせてジンジャーエール。
「ハッピーバースデー」
カチンとグラスを合わせる。
喉にじゅわりと染みる、甘い生姜の香り。
くすぐったそうな顔をしてグラスを置いた彼は、ポケットから小さな包みを取り出した。



