ケンの泣きそうな声に反応して顔を上げてしまった。

「よし!やれば出来るじゃん!」

ケンの笑顔。

こんなに近くで見れるのは最後かもしれない。
…なんとなく、そう思ってしまう。

あことケンの横を沢山の大学生が通りすぎて行く。

「あこは、今…自分の進むべき道が見えてるはずだよ?

いいか?

…もしも、俺がジャンケンで勝ったら、あこはこのまま、このリングをもう一度はめる。

そんで、俺と手をつないで大学の門をくぐる。
…そんで、これからもずっと、俺の隣で笑っている事!


…もしも、あこが勝ったら、そん時は………
この紙に書いてある場所へ行く事。

…そんで、もう俺のとこへは戻らない事。」

そう言って、ケンは、そっとあこの右手に紙きれを渡した。

“見てもいいよ”
ケンはあこに微笑みかけた。

何?
カサッ……

【西中央総合病院

5階 B病棟

503号室】

その紙きれを見る。
ケンの書いた字じゃない。
綺麗な字。

病院…?

―――――!!
『ケンッ!!これって……』

まさか…
まさか……