Snow Drop~天国への手紙~(上)【実話】

「あこ…ちゃんだっけ?
俺、アツシってゆー名前!よろしくな?」

『あ…、こっ…こんばんはっ!!』

あこは、今目の前で微笑んでいる一人の男から目が離せなくて、呆然としながらも、とりあえずの挨拶。

やだな…
どうしちゃったんだろ…

呆然と固まり続けるあこを見ながら“アツシくん”が笑った。

「あっ!俺もあこちゃんに嫌われてるっぽくねぇか?
睨まれてるし!!」

違う!違う、違う!!
睨んでるんじゃなくって…

目が離せないだけ。
体がね、動かないだけ。

「アハハッ!!違う!違う!
あこはねぇ、ちょっと人より警戒心が強いだけ~!!」

エリはいつもあこのピンチを救ってくれる。

エリは、困った顔をしているあこをかばう様に笑った。

そうだ。
エリが言った通り。
あこは昔から、あまり人を信じない。

信じていても裏切られたら、傷付いてしまうから。
お父さんの事を信じていたお母さんが、傷付いてしまった様に…

仲良くなってしまえば、壁は無くなってしまうけれど、それでも…常に警戒心が強い。

別に、人から酷く裏切られた経験も無いし、特に理由も無いけれど。

もう1つ。

あこは、本気で人を好きになった事がない。
だから、みんなが言う様なドキドキだとかトキメキだとか…

よく分からない。

だから、今、戸惑ってるの。

彼を見てから、心臓が鳴り止んでくれない。

あこの心臓、どうかしちゃった…

トクン…トクン…トクン…