「嘘つきなんだから」

じっとわたしを見たあと、困ったように言った香苗は続ける。

「まかせられたいかどうか、稲垣くんの意見は分からないんだよ」

「‥‥でも、イヤなオンナよりはいいもん」

ザクザクとサラダをフォークで刺しながら、週末にずっと私に触れていたがった律人を、思い出す。

相沢さんの事を何も聞かない私の事、どう思ってたんだろう。

週末のいつもと違う律人の行動は、私を好きだって事を表現してるのかと思ってたけど違うのかもしれない。もしかしたら、私のこのモヤモヤした気持ちを何か感じ取ったから、なんだろうか。


「で、町田さんにお願いするのは名前を借りる事だけなんだ?」

向かいから聞こえて来た声にふっと意識を戻すと、香苗の心配そうな顔がある。

「うん。町田さん、事情聞いてもオーケーしてくれたし」