別れるための28日の蜜日

その後すぐに鳴ったチャイムに、我に返って玄関に向かう。

相手が誰であれ、とりあえず受け取ろう。受け取って、後で律人に確認したらいいんだ。

鍵を開けドアを開くと、モニターで見るよりずっと美人な女性がいた。
背は少し小柄で、ダークブラウンの髪をユルフワにセット。白のコートは上品だけど甘めで、雰囲気に良く合っている。

「私、相沢沙耶香と申します。律人さんはご在宅ですか?」

真っ直ぐに強い視線。律人にとっての何なのか、私の存在を測ってる。

「り、稲垣さんは今、同僚とコンビニに行っていて‥‥。あの、私も稲垣さんの以前の同僚で、お留守番してて」

相手がどんな人なのか分からないんだし、余計な事は言わない方がいいだろう。相手が勘違いする言い方をあえてしておく。この言い方なら数人で遊びに来て、私がお留守番してるみたいに聞こえるだろう。

「そうだったんですか。失礼しました。急に女性がいらっしゃるからビックリしちゃって」

はぁっと大きく息を吐いた相沢さんは明らかにほっとした表情を浮かべた。