15年も姿を見ていないのに、飲み屋街入り口のオブジェの前に立っている大嶋には、すぐに気づくことができた。

あの頃の幼さは少しだけ面影が残っているものの、背はぐっと伸びていて肩幅はがっちりしていた。


「久しぶり。全然変わってないな」


その声だってあの頃よりは低くなっているはずなのに、なぜか懐かしいと感じてしまう。


「大嶋は大人になったみたい」

「そうか?俺だって変わってねえよ」


ジャケットの裾から見えた腕時計はロゴまで見えなかったが、多分セイコーの物だ。私はあまり時計に詳しくはないけれど、似たようなデザインのものを大樹がしていた。

時計を見ていたつもりだったけど、いつの間にか大嶋の手を見ていた。


その手だけは私の知らないものだった。