「大賞は、十和さんのクリアネスです」

十年前の今日、審査員の室井佑月さんの声が授賞式会場に響いたあの瞬間。

私の頭に浮かんだ気持ちは、「やった~!」とか「嬉しい!」とかではなく、
「あ、なんか知ってる作品だ」でした。

「十和ちゃん、呼ばれてるで!」
隣の席に座っていた作家の陽未ちゃんが、そう言って肩を叩いてくれて、ようやく自分のことだと理解できたという体たらく。
そのくらい、実感がなかったんです。

  
当時の私は処女作『クリアネス』を書き終えたばかり。
それまで小説を書いたこともなかったし、これから書いていく予定もありませんでした。

じゃあなぜ運よくNKSTに応募してたのか?
というと、クリアネスを読んでくださった読者さんのひとりが、熱心に応募を勧めてくださったから。

最初は尻込みしてお断りしたわたしに、何度も何度も勧めてくださった読者さん。
その熱意に押され、とりあえずエントリーしてみることに決めました。

なんかよくわからないけど勧めてくれてるし、お祭りみたいで楽しそうやし……。
そんな感じの、消極的でゆる~い「はじめの一歩」でした。

でも、結果的に大賞をいただき、たくさんの読者さんが自分のことのように喜んでくださって。
受賞したことも勿論嬉しかったけど、それ以上に、読者さんに喜んでいただけたことが、涙が出るくらい嬉しかったです(:_;)!!


あのとき応募を勧めてくれた読者さんがいなければ、わたしはNKSTに参加しなかっただろうし

あのとき受賞を喜んでくれた読者さんたちがいなければ、この先も書いていこうとは考えなかっただろうな、と思います。

あのときの皆様、本当にありがとうございました(;o;)
まさに読者さんが導いてくれた、十年のスタートでした。