ドクン…




ドクン……




ドクン…




彼女の笑顔を見た瞬間


俺の心臓は今までにない音を立てて動き始めた。




今まで止まってたんじゃないかってぐらい、にぎやかな音


でも嫌な音じゃなくて、むしろ心地よかった。




ただ…


今動いているのは心臓だけ。




手足はぴくりとも動かないし、瞬きや…息をすることも忘れてた。




俺とは逆の方向に歩いて行く彼女




振り返りたいのに、振り向けない。




よく【人が振り返るぐらいの美人】なんて言うけど、それは違うと思った。




実際俺は振り返ることさえできないんだから…




彼女に全ての感覚を持って行かれてしまったように。