「なーに?翔ったら、びびってるの?」
「うっ…」
小さい声でびびってないと付け加える翔。
恵里香は相変わらず階段の上で楽しそうに笑っている。
「そりゃあ先生はいるよ、でもそんなの仕方ないじゃない。待ってても先生がいない日なんてあるわけない。」
翔の意見を巧みに躱す。
「じゃあ、どうするの?」
真希は不安げな顔で恵里香を見る。
「要するに、チャンスは今ってこと。もちろん職員会議なんてこの先もいっぱいあるし、一斉下校だって結構ある。でもこんなに好条件の時はなかなか無いでしょ?いつもは生徒会は残ってる人も多いし、掃除長引くところもあるし、図書室で勉強してる人もいる。うちの高校はそういうのゆるいから、しょうがないんだけど」
恵里香は全員の視線を浴びる中、堂々と言葉を放っていく。
「でも今日は、誰もいない!偶然なのかはわからないけど、生徒は多分私達だけ。先生はみんな職員室に閉じこもって会議だから、1時間以上は出てこないはず。」
「やらない手はねーな」
(陵汰…)
さっきまでの不穏な空気が一掃されたようだった。恵里香は何故かとてもやりたがっているようだし、他のみんなもそれにつられているように見えた。
(みんなやる気…!)
この時既に、私達全員がこの階段横に集まってもう20分は経っていた。

