カクレオニ


やるのが普通じゃない鬼ごっこだとしても、それでも別に構わない。

何年ぶりかになる鬼ごっこをやってみたくなった。













「普通じゃないってどういうことだ?」




私が口を開こうとした直前に、翔が玻璃に問う。








よく見ると、私、玻璃、優介意外は不思議そうに首を傾げるばかりで、少なくともやりたいとは思っていないようだった。



そんなみんなの雰囲気を感じて、少し恥ずかしいような、残念な気持ちになる。



実を言うと、もう「やりたい」と手を挙げてもいいくらいの勢いなんだけど、ここは空気を読んでおこう…

意見を出すのは、内容を聞いてからでも遅くはない。











みんなの視線は、玻璃と優介に集められた。


そして玻璃は私と同じようにやりたい感満載の瞳でこう言う。




「うーんとね、鬼ごっこは鬼ごっこなんだけど、隠れ鬼っていうやつをやりたいんだ」








「隠れ鬼?」




私が復唱すると、みんながよくわからなそうに顔を見合わせる。






(あれ…みんな隠れ鬼知らないの?)



私は好きだったけどな。


近所の公園に隠れるところが多かったからそこでよくやっていた気がする。













「おいおいお前ら、まさか隠れ鬼もわかんねぇのか?」






どちらかというと消極的な空気を完全に一網打尽にして話し出したのは優介。





「隠れ鬼ってのは、そのまんまかくれんぼと鬼ごっこが合体した感じなんだよ」







優介は玻璃の横で、みんなに説明をし始めた。















「最初はジャンケンかなんかで鬼をひとり決めて、そいつが三十秒数えてる間にほかの奴らは一斉にどこかに隠れる。そしたら鬼が動き出すから、隠れている場所から動かずに待つんだ」
















「それじゃあただのかくれんぼだろ。なにが普通じゃないんだ?」





優介の説明を遮って、翔が首をかしげて言った。




そりゃあ途中までしか聞いてないんだからそう思うに決まってるでしょ!




早とちりして自分の話に入ってきた翔に少しだけムッとしたのか、優介が翔に向かって「いーから聞いとけ」と咎めた。








「あのな、こっからが大事なんだよ。隠れたら鬼が動き出すまで待つってところまでは言ったよな?」







全員がうなづき、再び彼の言葉に耳を傾ける。











それから優介が話した内容は、私が今までやってきた隠れ鬼のルールとは少し違ったものだった。








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1, 1人の鬼を決める
→くじなど、公平であること


2, 隠れる
→鬼以外の者は、鬼が120秒数え終わる前に好きなところに隠れる。また、時間内に隠れていなかった者はその時点で失格とする。鬼は数えている間は目を閉じて耳を塞ぐこと。



3, 探す
→全員が隠れ、鬼が30秒数え終えると隠れ鬼をスタートする。鬼は好きなように探し回る。隠れていた者が1人でも見つかった時点で、逃走がスタートする。



4, 逃げる(最初に鬼に見つかった者)
→鬼に見つかった時点でその場を動き、鬼から逃げる。鬼は隠れているものを見つけるだけでは捕まえたことにはならず、タッチするまで追わなければならない。



4, 逃げる(最初に見つからなかった者)
→自分以外が鬼に見つかると、その場から動くことが出来る。停滞するか移動するかは自由。



→1~4を繰り返し時間内に全員捕まった場合は鬼の勝ち。1人でも逃げ切れば逃走者の勝ち。











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「っと、一気に話したけど大丈夫か?」








優介はこれだけを話し終えて、ふぅっとと息を吐き出す。