「じゃ、次俺な」
ひょいと高いところから腕を伸ばして、次に引いたのは陵汰。
「じゃあ私これ!」
「俺一番だ」
みんな続々と引いていく。恵里香の後に引くつもりだったのに。
「えぇっ、じゃあ…これ」
みんなに釣られて、残り三本の中から一番右の一本を抜き取る。
「3」
急いで書いたような殴り書きだった。
黒いペンで、五ミリ程の大きさ。
手元から目線をあるげと、残りの翔と真希も同時に引いたようだ。
優介の左手には、もう1本しか割り箸は握られていない。
それぞれが自分の番号を確認し終わった後で、玻璃が口を開いた。
「あっ私5番だ!よかった鬼じゃない」
「鬼?」
優介と玻璃以外の声が重なった。
「鬼ってことは…これからやるのって」
全員が気づいた。
「あ…あはは、ばれちゃった?」
玻璃は罰が悪そうに笑ってみせる。
「そ、鬼ごっこやろうと思って」
玻璃は観念したかのように少し唸ってから、優介と顔を見合わせて言った。
「それなら言ってくれれば良かったのに」
私は「なんだ」というふうに笑ってみせ
る。
いきなりくじ引けなんて言われたから何をするのかと思ったけど、意外とまともなことで安心した。
でも鬼ごっこの鬼なんて、じゃんけんでいいのに。
「だってみんなこうでもしないと来てくれなさそうだったんだもん!」
「そんなことはないけど」
翔も苦笑い。
「まぁいいじゃない。鬼ごっこなんて小学校以来だし、私久しぶりにやりたいかも」
恵里香は引いた割り箸を優介に返して、「ちなみに私は4番ね」と呟いた。
「で、でもね」
恵里香の一言により、鬼ごっこをやるという雰囲気ができたはずだった。
みんなが、声のする方へ視線を向ける。
その先にはまたもや玻璃が立っていた。
「…どうした?」
陵太は右手でくじを弄びながら聞き返す。
「実はさ…ただの鬼ごっこじゃないんだよね」
「え?」
玻璃が告げたその言葉は、優介を除いた五人には、理解し難い内容だった。
さっきまで上向きだった空気が、一瞬曇った気がした。
普通でない鬼ごっこって、どういうこと
なんだろう。
私が小さい時からやっていたのは、本当に普通の鬼ごっこ。
最初にじゃんけんや立候補で鬼を決めて、その子が十秒数えている間に逃げる。
追いかけられてタッチされたら、鬼を交代してまた十秒を数えてから走り出す…

