カクレオニ







































「あ!いたいた〜、遅いよ二人共」








E組の影から、玻璃が顔を覗かせる。







「ごめんごめん、ちょっと掃除手間取っちゃって」








私と真希は、ちょうど隣のD組の前を歩いていたところだった。






A組横の階段からここまで来るのに、私と真希の間に会話は無かった。



玻璃が現れたことでさっきの重い空気が一変し、他の陵汰達も交わり自然と口数も増える真希。

















あれは何だったんだろう。




突然だったからよく頭が回らなかったけど、やっぱり様子がおかしかった。




いつも冷静な真希があそこまで取り乱すなんて。





私が掃除をしていた間に、真希はどこで何をしていたのだろう。

上から降りてきたってことは三階に用があったと考えるのが妥当だと思うけど。














「結花、これ引いて」




階段の前で立ち止まっていた私に、優介が七本の割り箸を見せる。

全ての箸の掴む部分を左手で握って、それを私の前に差し出した。










「なにこれ」














優介の左手から、数段上で壁によしかかって腕を組んでいる陵汰に視線を移す。




「俺もよくわかんないけど、くじ引きかなんかだろ。これからやることに関係してるんじゃないか」









陵汰はそう言うと、メガネを押し上げながらこちらに向かって階段を降りる。







「とりあえず引いてみろよ、始まらないだろ?」







そして私に軽くほほ笑みかけた。










「ほーら、これ終わんないと内容話せないだろ?結花、どれでも引いちまえよ」




そして待ちくたびれたのか、優介が不満そうに首をかしげて割り箸を持った左手を更に伸ばしてくる。





くじ引きか…




なんか一番最初に引くってのが嫌な気もするけど、玻璃は真希と何やら話し込んでいるし、翔は迷っている私を「早く」と急かすように見つめてくる。




そうすると必然的に、余っているのは…









「恵里香、先引いてくれない?」








私は少し上目遣い気味で、階段に座り込んでいた恵里香を見た。