カクレオニ

私を見つめる真希の表情は、怒っているようで、動揺しているようにも見える。





両手を固く握りしめて、肩をこわばらせて、真希はやっと私から目をそらした。










「……真希?」







思わず名前を呼ぶ。










「……」






それでも何も言わず、今度は私の足元を見て動かなくなる真希。





下を向いた彼女の前髪から透けて見える瞳からは、いつもの冷静さは消え、代わりに動揺が揺らめいていた。















真希が突然口を開く。




















「結花、都市伝説って、信じる?」
















「都市伝説…?」















真希は私の予想の右斜め上を行く言葉を口にする。













「それは…わかんないけど、でも都市伝説なんてそんなの、噂でしょ?」











気づけば私は真希の肩に手を置いて、半ば強引に揺すっていた。









「いきなりどうしたの真希、変だよ」











私に揺さぶられてやっと目線を上にあげた真希。










「……ごめん。なんでも、ない」

























しかし真希はそれだけ言うと、ずり落ちそうになっていた鞄を肩にかけ直し、教室が並ぶ廊下を歩き始めた。













「時間。行こ」








二、三歩進んだところでピタリと足を止めて、振り向きざまにそう言った。











「…あ、うん」



















このやりとりの中で、真希は一度も私と目を合わせようとはしなかった。