ガコン
西日に照らされた教室に、大きな音が鳴り響く。
私が棚の横にゴミ箱を戻した時には、教室には誰もいなかった。
とゆうか、この校舎にはもう殆ど生徒など残ってはいないだろう。
さっきゴミ捨てから帰ってきたけれど、廊下を往復する際にすれ違ったのはたったの4、5人程度だ。
しかも全員玄関に向かって小走りになっていたから、この後予定のある私達以外、最早誰もいないのではないか。
そんなことを考えながら、私は手についたホコリをパンパンと払う。
「もう、みんな勝手なんだから」
私は掃除を一緒にしていたクラスメイトに向かってため息と共に悪態をついた。
掃除を始めたのはいいものの、三人の男子はまじめにやらないし、女子は女子で自分の仕事だけさっさとやって帰ってしまった。
そして残された私はというと、一人で黙々と、黒板、窓拭き、掃除用具の整理整頓、そしてごみ捨てを終わらせたのだった。
「最後は全員でチェックしろって先生に言われたのに、私しか残ってないじゃない!」
今日は先生は皆会議で早めに職員室へと戻らなければならなかったから、掃除に先生がいない代わりに、終わったあとは全員でちゃんと出来ているかチェックしろと言われていたのだ。
なのに皆はここぞとばかりにサボりまくって、形だけ終わらせればそれでよし(全く綺麗じゃないけど)という必殺技を繰り広げた。
結局私しかいないし。
まぁ、高校生にもなって掃除を真面目にやるなんて方が珍しいのかもしれないけど、でも私達の担任は潔癖症と言っても過言ではないくらいの自称「綺麗好き」である野中先生だ。
サボろうにもサボれない。
だから先生のいない今日がサボるチャンスだ、ラッキー♪とか思う気持ちもわかるけど、それだと班長の私が怒られるんですけど!?
そんな文句もたらたらに、「そういえば」と時計を見上げる。
「えぇ?!」
驚愕した私の目に飛び込んできたのは、
午後4時20分を指した秒針だった。
「やばいやばい、掃除に20分もかかってたの!?」
そう言う私の頭からは、掃除終わりのチェックのことなんてすっきりと吹き飛び、気づけば教室を出ていた。
「っと、いけない、鞄忘れてた」
そう呟いて鞄を持ちまた走り出した私は、誰もいなくなった廊下の異様な静けさに、少しだけ嫌な感覚を覚えたのだった。