教室に設置されたスピーカーから、帰りのHR終了のチャイムが聞こえてくる。
時刻は午後4時前。
窓から見える景色もオレンジ色に染まり始めていた。
まだ予定の4時半まで30分ほどある。
私は今日掃除だから、それにかかる時間を含めても多少の余裕はできるだろう。
改めてあたりを見渡す。
陵汰と恵里香、翔はたった今教室を出ていき、玻璃と優介は既にどこかへ行ってしまったようだ。もう影すらなかった。
「私も急がなきゃ」
鞄をもって席を立った時だった。
「結花、時間まで暇?」
廊下に出た私の後ろから声をかけてきたのは、真希だった。
「掃除だけど、終わったら暇だと思うよ?」
廊下の隅に鞄を置いてから、私は真希の方に向き直った。
真希は鞄を肩にかけて、壁によしかかっている。
「そ。じゃあ待ってるわ」
「いいけど…どうかしたの?」
真希は私たちと行動しているけど、いつも一匹狼って言うか、後ろから皆を眺めるような、一歩下がったところにいる感じがする。
真希が私達を自分から待つことなんて、初めてなのではないか。
「……ちょっとね」
(…?)
真希は二、三秒の間を置いてから小さくそう答えた。