それは多分、私にとって初めての恋だった。

四月、入学式。

新入生代表として登壇した彼。

私は、一番前の列で見ていた。

眼はぱっちり二重で優しげで、高い鼻は筋が通っている。

薄い唇は男の子なのに、ピンク色でとても綺麗。

穏やかな顔は少しだけ緊張していて、だけど新しい日々への期待からか、興奮からか、少し頬が上気している。

ハチミツみたいな色の綺麗な髪は、サラサラとして触りたくなってしまう。

一目見て気づいた。

私は彼のことが、好きなんだ、と。

相手のことを何一つ知らないのに恋に落ちるだなんて、眉をひそめられるようなことなのはわかっている。

だけど、壇上で堂々と演説をしている彼を見て、高鳴る鼓動はとめられない。

今までこんな経験なかったけれど、言われなくてもわかってる。

彼をずっと見ていたいという気持ち、吸い寄せられる視線。

これは恋だ。

誰になんと言われようとも、これは恋なんだ。