その笑顔に一瞬胸が痛むのを感じた。


あの日、ここで号泣していた楓先輩を思い出す。


「なんだよ、みんなで来てくれたのか」


ベッドの上から嬉しそうな琉斗の声が聞こえてきて、あたしは視線をそちらへ向けた。


そこには笑顔の琉斗がいた。


手や頬には絆創膏が貼ってあり、それはいつもと変わらない琉斗に見えた。


「琉斗、調子はどう?」


そう聞きながらベッドに近づき、すぐに違和感を覚えた。


足があるべき場所の布団が膨らんでいない事。


この布団の下に琉斗の足はないということを物語っていた。


「あぁ、もうこの通りピンピンしてる!」


琉斗はそう言い、握り拳を作って見せた。


「元気そうだね」


そう言いながら、自分の言葉が胸に引っかかるのを感じる。


元気そう。


うん、確かに今の琉斗は元気そうに見える。


だけどそれは誰がどう見ても見せかけだけのもので、琉斗の両足はもうこの世にはないのだ。


「みんなでお見舞い買って来たよ!」


紀子が元気よくそう言い、買って来たフルーツバスケットを見せる。


「うおぉ! すっげぇ豪華だな!」


琉斗は目を輝かせてフルーツを見る。