「だからさ、なにか悩みとかあるなら言ってね?」


愛がそう言い、あたしの手を握る。


少しだけくすぐったい気持ちになった。


2人になら言ってもいいかな。


相談しても、笑われないかな。


そんな気持ちになって来る。


「実は……ね……」


「うん?」


紀子が首を傾げてあたしを見る。


愛は何も言わず、あたしの次の言葉を待っている。


実はね、誕生日会の日にね……。


頭の中でその言葉が流れて行くが、口からは何も出て来なかった。


アプリの話なんかして誰が信じてくれるだろう?


それこそ、あたしの頭がおかしくなったと思われてしまうかもしれない。


アプリを使って紀子と愛の関係を切り取り、琉斗の両足も切り取った。


そんな妙な話できるわけがなかった。


「じ、実はさ、眠れなかったんだよねぇ。琉斗の事も大雅の事も心配で、それで授業中も全然身が入らなくて」


あたしは早口にそう言っていた。


背中に汗が流れて行くが、2人が疑っている様子はない。


「そっか。じゃぁ今日は早く帰ってよく眠らないとね」


愛はそう言い、笑顔を浮かべてくれたのだった。