家に帰って琉斗の身に起こった出来事を話している時も、あたしは半分上の空だった。


「琉斗君大丈夫なの?」


「わかんない。大雅と2人で病院へ行ってみたけれど、まだ手術中だったから」


「大変な事になったじゃないか。サッカーももうできないんだろう?」


「たぶんね。両足切断だって聞いたから」


あたしはスラスラと答えていく。


琉斗に対してはもう何も感じることはなかった。


あたしは大雅の役に立てた。


大雅の大きな目標を手助けしたのだ。


そして、帰り際のあのキス!


軽く触れるだけで頬を赤くして帰って行った大雅を思い出すと、自然と頬は緩んでいった。


あれだけのキスで照れてしまうなんて、なんて可愛い人なんだろう。


あたしなら、大雅に全部を捧げても大丈夫なのに。


でも、そんな事は絶対に言わない。


大雅のペースに合わせてあげよう。


「大雅君も大変になるわね」


突然お母さんの口から出て来た大雅の名前にあたしは「え?」と、首を傾げた。


「だって、琉斗君の代わりなんてプレッシャーでしょ?」


琉斗の代わりになることがプレッシャー?


それじゃ大雅の方がサッカーが不得意という見方になってしまう。


あたしはムッをしてお母さんを見た。


「大雅は大雅のプレイをすればいいの。別に琉斗の真似なんてする必要はないんだから」


「それはそうだけど……」


「大雅も琉斗も実力はほぼ互角だし、大雅の方がずっと練習量が多いんだから、心配なんて必要ないよ」


あたしはそう言い、勢いよく立ち上がると風呂場へと向かって行ったのだった。