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先生はあたしが大雅と一緒に早退することに目をつむってくれた。


傷心状態の大雅を1人で帰らせるのも危険だと考えてくれたようだ。


「大雅と2人で早退する日が来るなんて、思ってもみなかったなぁ」


2人で肩を並べて歩きながらあたしは明るい口調でそう言った。


「あぁ、そうだな」


大雅もできるだけ返事をしようとしてくれている。


天気は良く、梅雨明けも近そうだ。


「なぁ、心」


「なに?」


「手、つないでて」


大雅はそう言い、あたしに右手を差し出して来た。


あたしはその手を握り返す。


いつもと変わらない大きくて安心できる大雅の手が、あたしの手を包み込んだ。


「大雅、このまま病院に行っても大丈夫?」


「……あぁ。覚悟はできてる」


大雅は大きく頷いて、あたしたちは病院行きのバスに乗る事になったのだった。