この人、サッカー部に入っている1年生だ。


彼の目は赤く充血していて、ついさっきまで泣いていたのがわかった。


「え、なんで泣いてるの」


愛が驚いたように口走る。


あたしも声をかけない方が良かっただろうかと思い、たじろいた。


「琉斗が……事故にあったんだって……」


彼は震える声でそう言ったのだ。


あたしは目を見開いて「事故……?」と、無意識の内に聞き返していた。


「あぁ。今朝学校へ来るときに事故に遭って、今病院に運ばれたって……」


話を続ける男性と。


「琉斗君って、サッカー部のレギュラーに選ばれた人だよね?」


愛がそう聞いてくるので、あたしは茫然とした状態で頷いた。


「事故って……」


みんなが集まって泣くほどの大きな事故。


愛にもその深刻さがわかったのか、真剣な表情をしている。


「ちょっと、通して……」


あたしは人だかりをかき分けるようにして、その中心へと進んでいく。


よく見て見ればサッカー部の生徒の集団だということがわかった。


この教室の前でひとだかりができると言う事は……。


考えながらあたしは輪の中心へと移動してきた。


そこには廊下に座り込みスマホを耳に当てた状態で泣いている大雅がいた。


「大雅……」


大雅はあたしにも気が付かない様子で、次から次へと涙をあふれさせている。


電話の相手はきっと琉斗の両親かなにかだろう。