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前半戦30分が過ぎていた。


得点は1対1。


大雅たちのチームが先にリードしていたものの、相手も必死で食らいついてくる。


レベル的に言えば同じくらいのチームだった。


向こうのチームだって次の試合にかかっているから、みんな本気でかかってくる。


大雅はグラウンドの中を全力で走り、ボールを追いかけている。


「大雅!」


ボールを蹴っていた琉斗が大雅の名前を叫ぶ。


大雅はチラリと琉斗へ視線を向けて、小さく頷いた。


パスが回る。


大雅がボールを取り、そのまま相手チームのゴールへ向けて走り出す。


大雅が走れば観客が大きな声援を送りはじめた。


「いけ! そのままシュートだ!」


大雅のお父さんも興奮気味に声を張り上げている。


大雅は相手のチームをどんどん追い抜き、一気にゴール前だ。


キーパーが動く隙も与えず、ボールはあっという間にゴールへと吸い込まれていく。


「やった! 大雅すごい!!」


あたしは思わず立ち上がりそう言った。


その声が聞こえたのか、大雅はこちらを見て軽く手を上げた。


これならきっと大丈夫だ。


あたしはそう思い、ほほ笑んだのだった。