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その日、あたしは一睡もすることができなかった。


大雅はあの2人にあたしの家の場所まで教えたんだ。


そう思うと怖くて眠る事なんてできなかった。


紀子と愛に連絡を取り事情を説明した。


2人はあたしの事をすごく心配してくれたし、大雅に連絡を取ったりもしてくれたみたいだ。


だけど、大雅はその態度を変える事はなかった。


明日までに大雅の借金8万円を用意しなければ、あたしは……。


そう思うと、全身から血の気が引いていきそのまま倒れてしまいそうになる。


夜中の3時、あたしは足音を忍ばせて両親の寝室へと向かった。


ベッドの上の2人はぐっすりと眠っていて少しの物音では起きない。


部屋の奥に置かれている大きな棚に近づいて、一番上の引き出しを開けた。


両親がここから通帳や印鑑を取り出しているのを何度か見たことがあった。


微かな月明かりを頼りに机の中に手を入れる。


布の感触があって取り出してみると、それは通帳が入ったケースだった。


中には印鑑も一緒に入ってる。


よく眠っている2人を見て、ゴクリと生唾を飲み込んだ。


まさか自分がこんな事をするようになるなんて、考えてもいなかった。


通帳にどのくらい入っているのかわからないけれど、8万くらいならどうにかなるはずだ。


あたしは両手でその通帳を握りしめたのだった。