家までどうやって帰って来たのかよく覚えていなかった。


気が付けば自分の部屋にいて、外は真っ暗になっている。


鏡で自分の顔を確認すると目は真っ赤に腫れていてひどい有様だ。


帰ってからもずっと泣いていたみたいだ。


体には汗が絡み付いていて気持ちが悪い。


お風呂くらいは入らなきゃなぁ。


そう思い、着替えを手に取った時だった。


ベッドの脇に置いてあるスマホが光っている事に気が付いた。


一瞬、嫌な予感が胸をよぎる。


だけど相手は紀子や愛かもしれなくて、その光を無視することはできなかった。


ノロノロとスマホに手を伸ばし、画面を確認する。


それは大雅からのメッセージで、見たくもないのに画面上に表示されているから嫌でも目で追いかけてしまう。


《俺はお前と別れないからな》


たったそれだけの短い文章に、体が震えるのを感じた。


大雅はあたしを引き止めたいんじゃない。


借金を返すためにあたしが必要になっているだけだ。


ゲームセンターにいた大雅の姿を思い出す。


あの人はもうあたしの知っている大雅じゃない。


《あたしはもう無理だから》


そう打ち、メッセージを送信した。


これでいいんだ。


大雅と別れる結果になってしまったけれど、あたしはもうあの人についていく事はできないんだから……。