『サッカー部で一番強いのって、俺なんだ』


「うん、知ってるよ。だから大雅はサッカーが……」


『だから、頑張っても誰かを追い越す事はできない』


あたしの常葉を遮るように大雅は言った。


「え……?」


『俺より強い奴が他にいれば、きっと続けられてたと思うんだ。そいつを追い越したいって思って、頑張れてたと思うんだ』


「大雅……」


それじゃぁまるで、琉斗の存在が必要だったとでもいうような……。


『常に自分が1番じゃ、自分に勝つしか方法はないだろ? それがもう、苦痛なんだ』


本当に苦しそうな声でそう言う大雅。


あたしはその声を聞いて、自分の足を止めていた。


大雅の家まであと1キロほど。


電話をしながらでもたどり着く距離だ。


それなのに、もう一歩も足は前に進まなかった。


『心には申し訳ないけど、俺はもうサッカーはできない』


大雅のその声があたしの頭の中に何度も何度もこだましていたのだった……。