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サッカー部の部室の中から沢山の生徒たちが出て来て、ウォーミングアップを始める。


その中に大雅の姿はなくて、あたしは周囲を見回した。


大雅、なにしてるのかな?


話し合いに少し時間がかかっているのかもしれない。


この前の試合についての反省点は色々あっただろうし、監督と今日の練習を考えているのかもしれない。


そんな事を思いながら大雅が出て来るのをジッと待つ。


そういえば今日は楓先輩の姿が見えない。


大雅が試合で負けてしまったから、ファンでいることをやめたのかも知れない。


熱心なファンに見えたけれど、所詮は強い選手に憧れているだけの女子生徒だ。


彼女であるあたしの熱意に勝てるハズもない。


特等席で1人サッカー部の練習を見つめるあたし。


その時だった、1年生の選手が小走りにこちらへ向かってくるのが見えた。


「君、大雅を待ってるんだろ?」


そう聞かれて、「もちろんだよ」と、頷く。


するとその生徒はポリポリと頭をかいて「大雅はサッカー部をやめたよ」と、言って来たのだ。


「え……?」


頭の中は真っ白になり、なにも言いかえす事ができなかった。


サッカー部をやめた?


「でも……サッカーのユニフォームを持ってたよ?」


「あぁ、それは返しに来たんだよ。しっかりクリーニングにも出してあったし、大雅は本気でやめるつもりだよ」


男子生徒は落ち込んだ様子でそう言った。


「嘘だ……」


「ねぇ、君は大雅の彼女だろ? なんとか戻ってくるように説得できないかな?」


そんなの、言われなくてもやるつもりだ。